デジタル推進事業
人材育成・情報発信
「デジタル×資源開発」
実務に活きるカスタマイズ研修
「デジタル×資源開発」
実務に活きるカスタマイズ研修
資源開発技術者向けに特化した
カスタマイズ研修の企画と実施
- POINT
- なぜカスタマイズ研修を実施するのか?
- カスタマイズ研修の取り組み実績
- さらなる人材レベルアップヘ向けた課題と対策
本記事で紹介する内容
JOGMECは、石油ガス開発の専門性を有する職員に対し、機械学習やディープラーニングをはじめとした人工知能(AI)技術の獲得を目標とした人材育成の取り組みを行っています。なぜ石油ガス開発と人工知能技術の両方の専門性が必要か、人材育成目標の設定と達成指標などについては、「ゼロから始めた人材育成」の記事をぜひご参照ください。
本記事では、これまで企画・実施してきたカスタマイズでの人材育成研修プログラムの内容や、取り組みから判明した課題を中心に紹介します。特にJOGMECはAIの前提知識やプログラミング経験が十分ではない職員が大多数であったため、未経験者向けにどのような工夫が必要であったかを含めて紹介します。
なぜカスタマイズ研修が必要か?
JOGMECは、ビジネス課題(石油ガス開発事業に関する技術課題)からAI課題への落とし込みを行うために必要な専門性を備えた人材の育成を目指していますが、その目標に向けて、複数名が一緒に受講する集団を対象にカスタマイズした研修の企画・実施を行っています。その理由として2つの狙いがあるからです。
1つ目は、必要な基礎スキル(基礎的な機械学習理論の理解、最低限のプログラムの実装力)を獲得していくこと、すなわち助走を付けることを目指す狙いがあります。資源開発業界の技術者は、専門性によってはこれまで業務で全くプログラミングの経験がない方も存在しますが、その未経験者に対しても集団の中でフォローしながら基礎レベルまでを一気に磨いてもらうことが可能です。2つ目は、石油ガス開発事業で実際に生じうる課題に対して、AIを使うことで具体的に何ができるかの体感、すなわちどのように自分達の業務が改善されていくかを、ハンズオン演習などを通じて身近なものとして体感してもらい、他の人との意見交換などを通じたアイデアも出しながら、自分でもできるようになりたいというモチベーションを上げてもらうことです。
すなわちAIの経験がこれまで全くない職員に対して、AI技術を本格的に身に付けるために必要な「最低限の基礎力」、「AIで何ができるかの実感」と「取り組むためのモチベーション」を集団の中で互いにフォローし合いながら獲得してもらうことが最大の目的となります。初級レベルでは「基礎理論」や「最低限のプログラミングの実装力」を身につけること、そして中上級レベルではビジネス課題を解決するための実際のAIモデルを自ら構築する実習を通して、「より実践的な実装・データ処理能力の獲得」へと段階的にレベルを上げていくことを目標に設定しています。
これまでの人材育成の軌跡
これまでのカスタマイズ研修の実績を紹介します。
デジタル推進グループが立ち上がった2019年度は、職員の多くはAIの前提知識やプログラミング経験がゼロに近い状態であったため、初めに基礎知識獲得のためにG検定対策講座の集団受講とG検定の団体受験を行いました。その後にG検定ではカバーされていない機械学習に必要な最低限の実装力や石油ガス開発の実データを用いて実際に何ができるかを体感するために、初級レベルの「石油ガス開発データを用いた機械学習講座」を実施し、Python(プログラミング言語)を用いたハンズオンでの機械学習プログラミングの体感やビジネス課題のアイデア出しなどを行いました。
翌年度の2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮しオンラインでの研修に切り替えることとし、未受講者を対象に2019年度と同様の「初級レベルの石油開発データを用いた機械学習講座」をオンラインで実施しました。さらに同年は、ある程度プログラミングの基礎を取得した中~上級レベルの職員を対象に、石油ガス開発の技術課題に対し実際のAIモデルを自ら構築することを体感してもらうことを目的とした「石油ガス開発データを用いたプロダクト作成研修」を実施し、石油ガス開発の専門性ごとに数人のグループを設定して、各グループでテーマを設定の上、職員が主体となって講師の指導を受けながらAIモデルを作成しました。
2021年度は、業界全体のAIに関わる基礎力の底上げのため、これまで行ってきたJOGMEC内部研修のプログラムを外部向けにアレンジし、まずは外部の資源開発企業向けに「初級レベルのAI基礎研修」をオンラインにて実施しました。本研修はオンラインにて2日間実施され、外部講師によるディープラーニングの基礎講座(理論部分中心)に加えて、JOGMEC職員から自分達で構築した石油ガス開発課題を解決するAIモデルの紹介も実施しました。
カスタマイズ研修の取り組み実績
さらなるレベルアップに向けて~デジタルスペシャリストを目指し~
これまでの取り組みを通じて実感した、さらなる人材のレベルアップに必要な3つの課題と対策を紹介します。
1つ目は、G検定取得者数は大きく増加しましたが、その先のE資格取得者数は伸び悩んでいます。その要因として、技術者の専門によってはこれまで実務でのプログラミング経験が全く無く、G検定取得を通じてAI基礎の理解はできたものの、E資格の前提レベルに達するまでにハードルがありました。理由として、経験が無いことから必要な前提スキルをどのように取得すればよいか分からないことが想定されます。そこで、G検定レベルとE資格のギャップ(特に数学的な理論、プログラミング基礎)を埋める研修を企画することが、対策に繋がると考えています。
2つ目は、集団研修を行う場合に、参加者間の数学基礎力やプログラミングスキルの差異が大きく、特に対象レベルが中上級へと上がるにつれ受講者全員が満足する研修プログラムを企画することが難しいことにあります。そこで現在は、基礎レベルは集団研修としていますが、中上級レベルからは1人1人が希望する個別研修(外部提供プログラムの利用等)により個人の希望や目標に併せて対応する方針が望ましいと考えています。
3つ目は、実務に通用するスキルを持つ人材を増やしたいという点であり、その対策として、デジタル推進グループでは今まさに多くのPoC(Proof of Concept:概念実証)を民間企業と共同で取り組んでおり、研修を通じ基礎力を取得し高いモチベーションを持つ職員をPoCに関与させることで、OJTのような形でノウハウ・知見を外部専門家から獲得しつつあります。加えて、アドバンスな内容や実践的な研修受講や機械学習書籍ライブラリの充実化等により、高いモチベーションを維持したまま、本人が希望する目標に向けて更なる勉強を継続できる仕組の構築を目指しています。
人材育成のレベル上昇に伴う課題と対策
※所属・役職及び本記事の内容は執筆時点のものです。
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