デジタル推進事業 人材育成・情報発信 いま注目のデジタル技術に関する動向調査
いま注目のデジタル技術に関する動向調査
デジタル技術の最新動向に関する調査
- POINT
- 日進月歩で進化しているデジタル技術、その潮流を的確につかむ
- 「デジタルトランスフォーメーション」実現のカギとは
石油天然ガス開発業界にも押し寄せるデジタル化の波
一口に「デジタル技術」と言ってもその範囲は多岐にわたり、機械学習技術、深層学習技術、センサー技術、クラウド、ロボット、ドローン、自動運転技術など、様々な技術が包含されます。
そして、昨今のデジタル技術の進歩には目覚ましいものがあります。
スマートフォンを1人1台保有している時代となり、20年前に使われていた携帯電話の多くはすでに姿を消しました。また、パソコンは薄型軽量で持ち運び可能なサイズとなり、さらには家電までもがインターネットにつながるようになり、私たちの生活は非常に便利になりました。
デジタル技術の台頭により、多くの業界ではDisruptive Innovation(破壊的創造)と呼ばれる、旧来のビジネス手法の枠組を超える変革が起こっています(例:小売業におけるAmazon、運送業におけるUberなど)。石油天然ガス開発業界においても、デジタル技術によるビジネス変革(Digital Transformation)の波は押し寄せており、これらのデジタル技術を活用した操業の効率化や、二酸化炭素排出量の低減をはじめとして、究極的には石油天然ガスが眠っている油田の発見確率向上など、探鉱・開発・生産の現場における様々なシーンで大きな期待が寄せられています。JOGMECとしては、多種多様なデジタル技術に関する知見を深め、それらの技術をどのようにして石油天然ガス開発の現場に取り込めば、有効に適用できるかという可能性を探るため、常に最新のデジタル技術に目を向け、情報を収集・蓄積していきます。
デジタル技術適用動向におけるキーワード
昨今のデジタル技術適用動向におけるキーワードとして、以下の3つが挙げられます。
(1)クラウド
石油メジャー企業をはじめとする石油天然ガス開発企業各社は、データを自社のデータセンターではなく、クラウド上で管理する方式に移行しています。こうしたクラウドへの移行の背景には、サービスプロバイダー各社がクラウドを介して自社のサービスを提供しているという潮流があります。このことが駆動力となり、各社ではクラウドを介したデータの保管・利用が積極的に行われるようになりました。さらに、クラウドコンピューティングなど計算処理能力が格段に向上したことで、石油天然ガス開発企業が保有する大容量のデータも処理できるようになったことも、クラウドの利活用に拍車をかけている一因と言えるでしょう。直近のデータ分析(例:機械学習・深層学習)を用いた事例では、主に掘削、メンテナンス計画の最適化、生産最適化など、いわゆる開発・生産の段階でデータ分析によるメリットを享受している例が多く見られますが、地下の貯留層に関するデータ(物理探査・地質・検層)の利用にもまだ多くのポテンシャルが残されています。
(2)データプラットフォーム
統一されたプラットフォームにデータを集約することにより、これまでは情報の検索に多くの時間を割かざるを得なかったエンジニアの業務効率が大幅に向上しています。また、部門ごとにデータが隔離されている状況(サイロともいう)を打破することで、より多くのデータにアクセスすることが可能になっています。
(3)コラボレーション
石油メジャー企業は独自のCenter of Excellenceを設立してデータ・人材・知見を集約し、新しいソリューション開発に取り組んでいます。また、生産設備や掘削機器のデータを一括管理にすることで、一貫した操業最適化が可能になっています。さらに、石油天然ガス開発の上流(開発)から中流(輸送)・下流(精製・販売)に繋がる一連の流れ(バリューチェーン)もまとめて管理できるようになり、一企業内だけでなく、複数の企業間でのデータ共有・コラボレーションによる新たなビジネスが成立しつつあります。
「新しい働き方」とデジタル技術
世界情勢は日々目まぐるしく変化しており、時には私たちの想定を超える事態により世界が一変し、新常態への適応が求められることもあります。
たとえば新型コロナウィルス感染症拡大の影響が私たちの暮らしを一変させたように、石油天然ガス開発業界に到来した「デジタル化の波」も、業界におけるこれまでの働き方を一変させ、各社はデジタル技術適用に関する戦略の変化を余儀なくされました。「リモート」が主流となっている今、たとえば洋上にある石油天然ガス開発現場に操業員を派遣しなくても、現場の計器のデータをスマートフォンで入手したり、自動で最適な操業状態になるように運転モードを変化させたりすることが可能となり、陸上で一貫して操業を管理するシステムの適用も進んでいます。
また、操業設備の監視・点検にドローンを適用する例も見られます。高所や広域の設備点検など、危険や長時間労働が伴う作業をドローンで代替することで、デジタル化されたデータを手に入れることができます。
このように、時代の流れやデジタル技術の進化に伴い、石油天然ガス開発業界も新しいデジタル技術を取り入れ、自らの業務を変革させている様子が見て取れます。
なお、デジタル技術の最新動向を含めた情報の追跡・収集は、今後も定期的に実施し、皆様へ情報を提供していく予定です。
JOGMECは、石油天然ガス開発企業の皆様にも広く活用いただけるよう、デジタル技術に関する情報の入手・蓄積に努めているほか、皆さまと共同でそれらのデジタル技術の適用に関する概念実証を行い、より効率的な事業の実現に取り組んでいきます。
※所属・役職及び本記事の内容は執筆時点のものです。