デジタル推進事業 技術的課題解決ヘ向けたPoC 断層自動解釈(物理探査)

断層自動解釈(物理探査)

見えない地下断層が機械学習によって
自動的にわかる方法

POINT
石油天然ガスの井戸を安全に掘るためには事前に断層の位置を正確に把握することが必要
現在は地質学の専門家が人力で実施しているため、コストと時間が必要
AI・機械学習で実施することにより、大きな業務効率化を期待

石油天然ガスの井戸を安全に掘るためには事前に断層の位置を正確に把握することが必要

 地球内部は直接目に見えないので、普段は感じられないかもしれませんが活発に動いています。この地球内部活動によって、地下に存在している地層(岩石)に大きな力が加わることによって、地層が割れ、「断層」と呼ばれる不連続となった箇所が生じます。山や川沿いあるいは海岸近くの切り立った斜面で、地表に露出した地層を見たときに隣同士の層がずれている線(断層)を見たことのある方もいるかと思います。
 石油・天然ガスの探鉱・開発において、井戸を掘っている際に、地層の割れた部分である断層を掘り抜いてしまうと、井戸を掘る際に使う液体(掘削泥水)が地層に移動してしまい失われてしまったり(逸泥)、井戸の坑壁が崩壊してドリルが埋まってしまったり、といった掘削障害の原因となります。このため、掘削計画を策定する際には、事前に断層の位置を精度よく把握し、断層を可能な限り避けた上で、最適な計画を立案する必要があります。
 更に、断層は油やガスが地層中を移動することを妨げる障害にもなることから、油やガスを回収する計画を作る際にも、断層位置や大きさの把握は重要です。

地表に露出した断層の例

現在は地質学の専門家が人力で実施しているため、コストと時間が必要

 地上からは直接見えない地下の断層の存在を把握するために現在最も多く利用されるのは、人工的な地震波を使った反射法地震探査により得られる、断面図を用いる手法です。現在は、地質学の専門家(解釈者)が「手動」で断面図を目で見て断層の存在を解釈していますが、人力での作業のためデータ取得エリアの広さにもよりますが一般的に数週間から数ヶ月という多大な時間を要しています。
 さらに、断層の解釈では上述の通り二次元の断面図を利用しますが、実際の断層は立体で三次元的に複雑な形状をしています。また、断層解釈の結果は、解釈者の熟練度や主観的な判断に大きく拘束され、解釈者が違えば、それぞれに違う断層解釈結果が出てきます。解釈の違いが大きければ、精度の高い解釈結果とは言えません。

従来手法と機械学習を用いた自動解釈手法との比較

AI・機械学習で自動的に実施することにより、大きな業務効率化を期待

 そこで、機械学習(以下「ML」とします)を用い、高速かつ高精度な「自動」解釈手法を取り入れることができれば、技術者による作業時間の大幅な短縮に繋がります。更に、人では限度のある三次元的な断層の広がりを解釈する作業にMLを適用することにより、断層解釈の高精度化も期待され、その結果、石油天然ガス開発計画の最適化による我が国の石油開発企業の収益性向上(コスト削減・生産量増大)に繋がると期待されます。
 JOGMECは、2020年にHalliburton社と共に、MLによる断層自動解釈を実プロジェクトの三次元地震探査データに適用することに加え、更に最適と思われる手法・パラメータを摘出・検証しました。その結果は、2021年9月開催のInternational Meeting for Applied Geoscience & Energy (IMAGE) 2021にて、「Automated fault uncertainty analysis in hydrocarbon exploration」というタイトルで発表をおこなっております。

デジタル推進グループデジタル技術チーム
橘田和泰
2011年入構。
物理探査船グループを経て、2019年よりデジタル推進グループデジタル技術チームに所属。

※所属・役職及び本記事の内容は執筆時点のものです。

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