CCS推進事業 地下技術 プロジェクト支援

プロジェクト支援

地下評価技術でカーボンニュートラルな
資源開発を支援

POINT
TRCラボでのデータ測定がフィールド適用の成否を左右
CCSと組み合わせた資源開発の取り組みを新たに開始

正確な物性値取得がプロジェクト成功の鍵

 JOGMECではこれまで、本邦民間企業の油ガス田権益獲得を目的とした、地下評価技術支援を行ってきました。その代表例は、アブダビやベトナムなどで実施したCO2-EORスタディです。これらのスタディでは、データ取得や、予測シミュレーションによる石油回収量の推定、さらにはフィールドでの実証試験まで行いました。この中で特に、TRCにある自前のラボでデータを取得できる点はJOGMECの強みです。
 CCSにおいて精度の高い地質モデルを作成するには、岩石と流体試料の正確なデータ測定が必須です。フィールドから得られた「コア」と呼ばれる岩石試料からは、一般的に空隙率や浸透率といった基本的な物性データを測定しますが、TRCではそれに加えて、空隙径の分布なども得ることでより深く岩石構造を把握することができます。また、地下を満たす流体とCO2の混合的な流れを決める物性値(相対浸透率)や、岩石表面の流体に対する親和性(濡れ性)なども測定することができます。さらに、地下水に含まれるイオン濃度や、石油やガスの温度・圧力変化に対する挙動、それら流体のCO2との反応といった、CCSには欠かせない流体サンプルの分析も可能です。
 モニタリングに関しても、コア内を伝わる弾性波の速度を測定し、地下の三次元的な構造把握の精度を上げることもできます。
 このように、TRCに所属する実験・分析のスペシャリストが確実に測定と検証を行うことで、データの質が担保されます。エンジニアによる地質モデルを用いたCO2圧入挙動の予測や、フィールドでの実証試験へと展開されていく中で、データ取得のあり方がプロジェクトの成否を左右すると言っても過言ではありません。

TRCラボでの相対浸透率測定に用いられる様々なコア流動試験装置
左:貯留層の高い温度を保つようにオーブン内で試験ができる。
右:CO2が流動する様子を医療用CTで可視化しながら測定ができる。

カーボンニュートラルな資源開発への新たな取り組み

 JOGMECは、石油・天然ガス開発に紐づくCCSプロジェクトや国内外の枯渇油ガス田を対象としたCCSプロジェクト、さらに水素・燃料アンモニアの低炭素化のためのCCSプロジェクトの技術支援に取り組んでいます。
 これまでJOGMECは、世界中の様々なフィールドを対象に石油・天然ガス開発の知見を高めてきました。今後、これまでに培ってきたラボ実験やデスクトップスタディによる貯留層評価スキームを、広くCCSに適用することを目指します。一方、CCSサイト評価には石油・天然ガス開発とは異なった新たな知見獲得も必要です。例えば、長期間にわたって確実にCO2を地中貯留するためには、圧入後のCO2の移動経路や貯留の形態を予測し、どこにリスクがあるかを評価する必要があります。枯渇ガス田を対象とする場合、古い坑井の健全性を確認し、場合によっては坑井を修繕する必要があります。帯水層を対象とする場合、数値モデル構築のために、新たな地震探査や坑井のデータを取得する必要があります。
 これらをはじめ、新たな知見等を獲得し、CCSプロジェクトの技術支援に取り組みます。

地下評価スタディでは、地質学と貯留層工学の専門家が議論しながら、数値モデルの作成を行う。

進行中のプロジェクト

東南アジアにおける高濃度CO2ガス田開発のスタディ(2020年度~)(参考1)
 JX石油開発株式会社と共同で、東南アジアの高濃度CO2ガス田開発のスタディを実施しています。これまでに、地質や貯留層工学を専門とする技術者が、天然ガスの生産量予測と、分離回収したCO2の貯留先となる枯渇ガス田や帯水層の評価を実施しました。

インドネシアにおけるクリーン燃料アンモニア生産のためのCCS共同調査(2020年度~) (参考2)
 JOGMEC、三菱商事株式会社はバンドン工科大学及びパンチャ・アマラ・ウタマ(以下、PAU)社と、インドネシア中央スラウェシ州ルウクのPAU社保有のアンモニア生産拠点、また三菱商事が最大株主となる同州のドンギ・スノロLNGプラント近傍において、CCS実施可能性調査を共同で行っています。

国内油田における二酸化炭素(CO2)を用いた原油回収促進技術(EOR)の実証試験に向けた共同研究(2021年度~)(参考3)
 INPEX株式会社と共同で、南阿賀油田(新潟県阿賀野市)を対象に、CO2-EOR効率改善技術(CO2フォーム技術)を用いて地下に残留した原油の回収促進効果を実証する共同研究を開始しました。用いられるCO2の一部は地下に残留するため、CO2貯留効果も合わせて検証する予定です。
 現在は、数値モデリングによる実証試験計画策定や、JOGMEC保有ラボにおける岩石および流体の物性値測定を中心に準備作業を進めています。2022年には新規に坑井を2坑掘削し、実証試験を行う予定です。本実証試験を通して、EOR技術の開発ならびに適用促進を図り、海外油ガス田での技術展開につなげていきます。

西豪州におけるクリーン燃料アンモニア生産を見据えたCCS共同調査(2021年度~)(参考4)
 三井物産株式会社の現地子会社であるMitsui E&P Australia Pty., Ltd.と共同で、西豪州における既存の生産ガス田ならびに枯渇ガス田を活用した、クリーン燃料アンモニアの製造と日本への輸出の事業性の検討を進めています。天然ガス由来の水素からアンモニアを合成し、その過程で排出されるCO2を枯渇ガス田に貯留します。今回の共同調査では、当該枯渇ガス田におけるCCSの有効性を調査します。

(参考1)CCSを用いた高濃度CO2ガス田開発の共同スタディを開始~ペトロナス・JX石油開発・JOGMEC~
(参考2)インドネシアにおけるクリーン燃料アンモニア生産のためのCCS共同調査の覚書締結について
(参考3)新潟県阿賀野市における二酸化炭素(CO2)を用いた原油回収促進技術(EOR)の実証試験に向けた共同研究の開始について
(参考4)西豪州におけるクリーン燃料アンモニア生産を見据えたCCS共同調査の実施

CCS推進グループ 地下評価技術チーム
技術部 EOR課
デジタル推進グループ デジタル技術チーム
森下諒一
京都大学大学院工学研究科修了。
企画調整部を経て、貯留層技術者としてCO2-EORや低塩分濃度水攻法といった
EORの産油国共同スタディ、データサイエンスのE&Pへの適用、CCSの地下評価を担当。

※所属・役職及び本記事の内容は執筆時点のものです。

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