CCS推進事業 国際連携 メタン漏洩検知に向けた取組み
メタン漏洩検知に向けた取組み
クリーンなLNGバリューチェーンに
必須なメタン排出管理
- POINT
- メタン直接測定技術評価および排出量算定手法の検証
- 天然ガス生産事業者とのメタン排出管理及びメタン排出削減に向けた連携事業
- 天然ガス購入事業者や国際機関とのプラットフォーム提供
気候変動において大きな意味を持つメタン排出削減
天然ガスを液化して製造されるLNGは、我が国の発電の約4割、都市ガスのほぼ全量を占める重要かつ不可欠な資源です。化石燃料の中でもCO2排出量が少ないため、エネルギーの安定供給と持続可能な経済成長の両方を実現するために、今後も重要なエネルギー源として使われ続けていくことが予想されています。また、天然ガスはLNGとして日本に持ち込まれる以外にも、次世代のクリーンエネルギー源である水素・アンモニアの原料としても期待されています。
天然ガスの主成分であるメタンは、CO2に比べて28倍もの温室効果があると言われています。また、メタンの大気中の寿命が10年程度であることから、今後排出されるメタンを削減することは気候変動への影響を緩和する観点で大きな意味があります。
近年では地球全体の排出量の 6 割を占めると言われている人類の活動由来のメタン、特に石油・天然ガス産業、石炭産業、廃棄物、農業、畜産業などからの排出削減に向けた取組みが議論されています。その中でも天然ガス事業においては、配管等からの意図しない漏洩、燃焼機器からの未燃焼メタンの放出等が排出源として存在していますが、メタン自身が製品であることから、経済性を確保した手法によってメタン排出量を削減し、適切なメタン管理手法を実装することが望まれています。国際的には、Global Methane Pledgeが、2021年の気候変動枠組条約締約国会議にて発足し、2030年までに世界のメタン排出量を2020年比で少なくとも30%削減するという共通の目標が設定されました。また、石油・ガス企業からのメタン排出量について、透明性の高い新たな報告フレームワークであるOGMP2.0が、2020年に国連環境計画(UNEP)の主導によって設置されました。
メタン排出管理は天然ガスの大部分を輸入に頼る我が国にとって、喫緊の課題と言えます。
JOGMECのメタン排出管理技術の取組み
メタン排出管理において、直接計測と排出係数を用いた算定を組み合わせることによる、排出量の定量化および検証手法の実証や、商業的な導入が世界各国にて進んでいます。しかし現時点では、一部の直接計測に不確かさが存在すること、計測手法・算定手法が標準化されていないなどの課題があります。JOGMECはメタン排出量の定量化に向けて、これらの課題を解決するための技術事業を実施しています。
2021年度にJOGMECは、国際的に活動する測定事業者数社と共に、インドネシアのアンモニアプラントにおいてメタン漏洩の実測調査を実施しました。また、今後のプロジェクトでは、東南アジアのエネルギー開発企業と共に、本邦に輸入されるLNGの原料となる天然ガスを処理する洋上生産設備からのメタン排出量の測定および、排出量削減手法の検討を進めます。また、日揮グローバル株式会社が技術センター内に設置した、メタン排出管理実証設備において「漏洩メタン」と「未燃メタン」を再現することで、メタン計測技術の検証にも取り組んでいます。
上空からのメタンの測定・検出方法として期待されるトップダウン手法については、ANAホールディングス株式会社および、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力し、定期航空便を用いることによる上空からのメタン排出の計測技術についての検証も進めています。JAXAは従来より、衛星による温室効果ガスの測定技術であるリモートセンンシング技術を有しており、ANAの航空機と組み合わせることで、トップダウン計測手法の実装を目指しています。
PT Panca Amara Utama 社提供 アンモニア製造拠点におけるメタン排出量測定
日揮ホールディングス(株) 社提供 メタン排出管理実証設備
LNGバリューチェーンのクリーン化に向けた国際連携
JOGMECはメタン排出管理に関する国際的な議論の場において、JOGMECが公表しているCIガイドライン(CI:Carbon Intensity、炭素強度)の考え方や技術検証事業に基づいた知見を積極的に提供することで、天然ガス生産事業におけるメタン排出管理手法の実装に貢献しています。
我が国が2050年カーボンニュートラルを宣言し、CO2の排出量を実質ゼロにすることを目標とする中、天然ガスはトラジションエナジーとして重要視されています。LNG輸入国の立場として、ネットゼロに向けたLNGからのメタン排出削減のための連携(Coalition for LNG Emission Abatement toward Net-zero)も開始しております。大規模なLNG買主事業者である本邦のJERA、韓国のKOGASがLNG事業ごとにメタン排出管理や削減取り組みに関する情報の提供を生産者側に求め、収集された情報をJOGMECが取りまとめた上でJOGMECが提供するプラットフォームで公表するほか、生産者のベストプラクティスを紹介する取り組みです。本プラットフォームは、OGMP2.0などの取組みとの連携も模索し、他のLNG買主事業者に拡大することも期待しております。
JOGMECは、エネルギー安定供給とエネルギートランジッションにおいて重要な役割を担うLNG事業を推進していくために、LNGバリューチェーン全体のクリーン化を図る取組みを実施しています。
- エネルギー事業本部 CCS・水素事業部施設技術課課長代理
- 下内 真
- エンジニアリング会社において、
中東でのガスプラント事業や液化天然ガス製造事業に従事。
2019年よりJOGMECにて施設技術事業に従事し、2021年より現職。
- エネルギー事業本部 CCS・水素事業部施設技術課
- 鈴木 陽一
- 重工業界勤務を経て、2021年JOGMEC入構。CCS推進グループ施設技術チームを経て、2021年より現部署(CCS・水素事業部施設技術課)に所属。
※所属・役職及び本記事の内容は執筆時点のものです。