CCS推進事業 地上技術 DDR膜
DDR膜
新たなガス田の開発を
促進する新しい膜技術の開発
- POINT
- 従来技術よりも効率的なCO2分離の技術開発
- PROJECT
MEMBER
開発メンバー -
- JOGMEC
- CCS推進グループ
施設技術チーム 担当調査役 - 田中勝哉
- 日揮グローバル株式会社
- プロセステクノロジー本部
技術研究所 チームリーダー - 長谷川裕晃 氏
- 日本ガイシ株式会社
- 研究開発本部
NCMプロジェクトリーダー代理 - 新野真紀子 氏
DDR膜実証への取り組み
JOGMEC 田中
石油・天然ガス等の化石燃料資源のなかで、天然ガスは燃焼時のCO2排出量が相対的に低いため、低炭素負荷の燃料・原料としてその重要性が増しています。わが国では天然ガスの大部分を海外から輸入していますが、天然ガスを継続的に供給するためには新たなガス資源(ガス田)の開発を続けていく必要があります。未開発のガス田の中には、ガスに含まれるCO2濃度が高く、その分離にかかるコストが高いため、開発の手がつかなかったガス田があり、今後はこのような高濃度CO2含有ガス田の開発も重要になってきます。
従来、天然ガスに含まれるCO2は化学吸収法等を用いて分離されてきましたが、最終的には大気放散されています。気候変動対策としての温室効果ガス排出削減のため新規ガス田開発での発生CO2の大気放散は抑制されるのが世界的傾向です。また、高濃度の含有CO2を低コストで分離回収できる技術は限られているため、その技術開発が世界で進められています。
新たなガス資源としての高濃度CO2含有ガス田開発を実現するには、優れた天然ガスとCO2の分離回収技術と回収されたCO2のCCS適用による温室効果ガス排出削減対応、いわば“ゼロカーボンガス開発“が極めて重要になってきます。
DDR膜は、高濃度CO2と天然ガスの主成分であるメタンを従来技術では対応できない過酷な条件下において低コストで分離することができる優れた技術です。JOGMECはDDR膜を用いたCO2分離技術を共同で開発してきた日揮グローバル株式会社と日本ガイシ株式会社と共に、米国にてこの技術の商業化を見据えたフィールド実証試験に取り組んでいます。
膜分離への期待
日揮グローバル株式会社 長谷川 氏
高濃度のCO2を含む天然ガスや随伴ガスからCO2を分離するためには、一般的には膜分離法と化学吸収法の二段階プロセスが用いられます。この理由は、化学吸収法のみではCO2分離に大きなエネルギーが必要となるのに対して、消費エネルギーの小さな膜分離法を組み合わせることで、効率的なCO2分離が可能となるからです。しかし、膜分離法は消費エネルギーが小さい一方、天然ガスの主成分である炭化水素とCO2を精密に分離することができないという課題や、使用とともに膜の材料が劣化するという課題があります。それに対して、現在開発中のDDR膜は、従来技術に比べて精密にCO2を分離することが可能であり、また高濃度のCO2を含む環境下においても高い耐久性があります。その結果、天然ガスのロスを抑え、膜の取り換えといったコストも抑えられます。このように分離したCO2は、CO2の地中隔離と同時に原油を生産するCO2-EOR(CO2による石油増進回収法)や、CO2を原料とする化成品の生産に活用することができます。
当社は環境・エネルギー分野に責任あるエンジニアリング会社として、DDR膜という技術を通してCO2の回収・有効利⽤技術の普及によるCO2排出削減に取り組みます。
世界最大級のセラミック製分離膜による効率的なCO2分離
日本ガイシ株式会社 新野 氏
日本ガイシ株式会社が開発したDDR膜は、直径180ミリメートル、全長1000ミリメートルの円柱状の基材に内径2.4ミリメートルの貫通するセルを約1600本配置したレンコン状の構造で、全てのセル内面にDDR型ゼオライトの薄膜が形成されています。DDR膜1本あたりの膜面積は12平方メートルで、世界最大級のサブナノセラミック膜です。
DDR型ゼオライトは多孔性の結晶性アルミノケイ酸塩の1種で約0.4ナノメートルの均一な細孔を持っており、この細孔よりも大きいガスはDDR型ゼオライトの細孔を通ることができません。一方、二酸化炭素(CO2)の分子径は0.33ナノメートルでDDR型ゼオライトの細孔よりも小さいので、細孔を通り抜けることができます。
このため、DDR膜にCO2を含むガスを流すと、DDR型ゼオライトの細孔により、他のガスからCO2を効率的に分離することができます。
DDR膜は、高圧かつ高CO2濃度下でも高いCO2分離性能を維持でき、耐熱性にも優れるため高温下での使用も可能です。また約1600本ものセルを配置したレンコン状の構造は、管状構造のゼオライト膜に比べて1本当たりの膜面積が大きく、設備のコンパクト化やコストダウンを可能にします。
当社は独自のセラミック技術によるDDR膜などの開発や製品供給を通じ、社会に新しい価値を提供するとともに低炭素社会の実現に貢献していきます。
※所属・役職及び本記事の内容は執筆時点のものです。
関連する技術・技術