CCS推進事業 国際連携 CCS関連法制度と事業環境
(カナダ)

CCS関連法制度と事業環境(カナダ)

カナダで進むCCS・水素事業のための
制度整備

POINT
資源大国カナダのカーボンニュートラル構想
カーボンニュートラル事業を推進するカナダの法制度
資源エネルギー分野での協力を活かしたCCS資源外交へ

資源大国カナダのカーボンニュートラル構想

 カナダは石油・天然ガス、石炭、金属等の資源に恵まれた国です。カナダは石油・天然ガスで経済を発展させてきた歴史がある一方、環境意識が高い国民性でも知られています。連邦国家であるカナダは独特の文化や歴史を持つ13の州・準州から構成されており、それぞれ経済構造が異なるため、連邦政府は国家全体の「調整役」として各州・準州と連携しながら気候変動への緩和策を推進してきました。また、カナダは2050年までに地球温暖化ガスの排出量を2005年比で40%~45%まで削減するという野心的な目標を掲げています。
 天然資源が豊富なカナダ西部、特にアルバータ州は、石油・天然ガス等の化石燃料を生産する一方、同時に世界トップクラスのCO2排出規制を整備しています。このため、既存の石油・天然ガス産業の施設・人材・知見を活かす形で、新たなカーボンニュートラル社会の実現に貢献する事業の検討が進んでいます。特に、環境負荷が比較的少ないと言われる天然ガスを原材料として水素やアンモニアを製造し、副産物であるCO2をCCSにより地中に圧入・貯留する「ブルー水素」や「ブルーアンモニア」は、スムーズなエネルギー・トランジションを実現する要として現地産業界で注目を集めています。
 カナダ西部では、国際的にも関心を集めるCCS事業が稼働中です。例えばサスカチュワン州には火力発電所からの排ガスを回収・貯留するバウンダリー・ダムCCS事業(Boundary Dam Carbon Capture and Storage Project)があり、アルバータ州でも地中深くにある帯水層にCO2を圧入・貯留するクエストCCS事業(Quest Carbon Capture and Storage Project)や、産業施設からの排ガスを輸送して地中圧入するアルバータ・カーボン・トランクラインCCS事業(Alberta Carbon Trunk Line、ACTL)等がこれまで立ち上がっています。(各事業概要は、下図および下表を参照。)
 今後アルバータ州では、これらの知見を活かして周辺産業から排出されるCO2を広域で受け入れる「次世代型CCSハブ・プロジェクト」を形成していく予定です。

図:カナダ西部の代表的な既存CCS事業(地図)

出所:各種資料を基にJOGMEC作成

カーボンニュートラル事業を推進するカナダの法制度

 カナダでは国家レベルでのCO2排出規制が連邦法「地球温暖化ガス汚染価格法(Greenhouse Gas Pollution Pricing Act、GGPPA法」により制度化されています。この連邦制度には二つの仕組みがあり、一つ目の仕組みは年間5万トン以上のCO2を排出する大規模事業所を対象とする排出量取引制度(Output-Based Pricing System、OBPS制度)です。二つ目の仕組みは、一般市民等エンドユーザーに対し、ガソリンやディーゼル等の化石燃料の温室効果係数を勘案した連邦炭素税(federal carbon tax)を課すことです。
 この連邦制度はカナダ国内の全ての州・準州で自動的に適用されますが、もしカナダの州・準州が独自のCO2排出規制を整備し、連邦制度と同等のCO2排出規制があると連邦政府にみなされた場合、その州・準州では連邦排出量取引制度、連邦炭素税、あるいはその両方が免除され、代わりに州・準州の独自の制度が適用されます。
 例えば、アルバータ州は独自のCO2排出規制を導入しており、このためアルバータ州内の大規模事業所はOBPS制度ではなく、アルバータ州独自の「技術革新・排出削減規制」(Technology Innovation and Emissions Reduction Regulations、TIER制度。)により排出量の取引を行っています。なお、アルバータ州は炭素税を導入していないので、連邦炭素税が州内で徴収されています。
 アルバータ州TIER制度では、排出量の上限を定められた大規模事業者は、同じように規制される他の大規模事業者と排出量(クレジット)の取引を行うことができます。さらに、規制対象外の産業に属する企業も、自主的に州政府が定める算定方法論に基づきCO2排出削減事業を実施し、オフセットを創出することで、オフセットをクレジット代わりに利用できる大規模事業者に対して販売することができます。
 このようにTIER制度には、大規模事業所を対象とする法的規制によるCO2排出量削減(クレジット制度)と、様々な産業を対象とする経済的インセンティブに基づくオフセット創出(オフセット制度)という2つのカーボンニュートラル社会の実装へ向けた取り組みが内包されています。現在、アルバータ州はオフセットを創出できるCO2排出削減事業とその算定方法論を公開しており、この中にはCO2の大深度塩水帯水層への地中圧入や、CO2を用いた石油増産回収(Enhanced Oil Recovery、EOR)に関する算定方法論も含まれています。

表:カナダ西部の代表的な既存CCS事業(事業概要)

出所:各種資料を基にJOGMEC作成

資源エネルギー分野での協力を活かしたCCS資源外交へ

 JOGMECは日本企業の海外事業を推進するために、資源国政府と積極的にコミュニケーションを取っており、これまでカナダ連邦政府、アルバータ州政府、ブリティッシュ・コロンビア州政府と石油・天然ガス分野で相互協力の覚書を締結しております。2021年10月にはJOGMECはアルバータ州政府とCCS、水素、燃料アンモニア等の新領域での関係強化も含む新たな覚書を締結しました。
 今後もJOGMECはこれまで築き上げた資源国政府等との協力関係をベースに、積極的にCCS資源外交を展開し、脱炭素に貢献するCCS・水素・燃料アンモニア等の事業を後押ししていきます。


(参考1)「カナダ:連邦政府の水素戦略とAlberta州政府の天然ガス戦略」

(参考2)『石油・天然ガスレビュー』(2021年11月号)「カナダにおけるCO2排出規制と政策動向:2050年カーボンニュートラル実現へ向けた取り組み」

(参考3)「カナダ・アルバータ州とCCSや水素・アンモニア製造等に関するMOUを締結~持続可能で多様なエネルギーの未来を構築するために~」

カーボンニュートラル推進本部 総括・企画チーム
CCS推進グループ 総括・国際連携チーム
水谷健亮
2012年入構。戦略企画、国際石油交渉、海外法律事務所出向を経て、2021年より現職。
海外CCS制度調査等を担当。法務博士(カナダ・アルバータ州弁護士およびブリティッシュ・コロンビア州弁護士)。
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