CCS推進事業 国際連携 CCS関連法制度と
事業環境(豪州)

CCS関連法制度と事業環境(豪州)

豪州で進むCCS・水素事業のための
制度整備

POINT
豪州ネットゼロ目標におけるCCS技術
豪州におけるCCS法制度
新たなインセンティブ制度の導入(CCSクレジットの創出)

豪州ネットゼロ目標におけるCCS技術

 豪州は2021年の10月、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)に先立ち、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出を実質ゼロにすることを宣言し、「長期排出削減計画(Australia’s Long-Term Emissions Reduction Plan)」を発表しました。この計画では、2020年に発表された「技術投資ロードマップ(Technology Investment Roadmap)」が重視されており、技術開発投資に注目したアプローチでネットゼロの実現を目指していくとしています。ロードマップでは、CO2排出削減に大きく寄与する新技術を投資対象にする方針が示され、2030年までに200億豪ドル規模を投資するとされています。また、ロードマップの年次文書(Low Emissions Technology Statement)の中でクリーン水素やCCSが最優先技術5分野のうちの2つとして指定され、それぞれの具体的な数値目標が設定されました。例えばCCSでは、CO2圧縮・ハブ輸送・貯留について、1トン当たり20豪ドル以下を実現するとし、オフテイク契約と開発承認が前提ではあるものの、早くて2025年、遅くとも2030年にはこれを達成する可能性が高いとしています。
 こうした政策文書から分かるように、豪州のネットゼロに向けた取り組みの中で、CCSは必要不可欠な技術であるといえます。また、2019年に公表された「国家水素戦略(Australia’s National Hydrogen Strategy)」においても、化石燃料から水素を製造する際の排出削減を担う技術としてCCSがあげられています。この国家水素戦略は、日本語訳と韓国語訳の概要版が発行されており(参考1)、豪州政府の公式サイトに掲載されているのと見ると、水素の想定顧客としての日本と韓国への期待の高さがうかがえます。

豪州政府の政策文書

(出所 :豪州政府公式サイトより)

豪州におけるCCS法制度

 豪州はCCSの法整備が進む世界有数の国の一つです。豪州では陸域と沿岸から3海里の海域におけるCCS事業は、州・準州政府の管轄になっています。3海里以遠の沖合と排他的経済水域にあたる200海里までのCCS事業は連邦政府の管轄となり、Offshore Petroleum and Greenhouse Gas Storage Act 2006(OPGGS法)が適用されます。その他連邦法には、貯留地層の探査に関する規定、GHGの圧入ライセンス発行に関する規定、プロジェクトの環境影響とリスク評価に関する規定、サイト閉鎖後の長期責任に関する規定などを含む法律があります。
 一方で、陸域と沿岸域のCCSを管轄するのは各州・準州政府になりますが、まだ法令が定められていない州・準州もあります。ビクトリア州、クィーンズランド州、南オーストラリア州では、陸域等でのCCSを対象とする法令が定められています。西オーストラリア州では全般的なCCS法令は存在しませんが、個別プロジェクトごとに法令を定める形が取られています。石油メジャーであるChevron社、ExxonMobil社、Shell社と日本企業が操業するGorgonプロジェクトは、世界最大規模のCCSプロジェクトとして注目されていますが、沖合60kmのバロー島でのGHG圧入・貯留や環境影響への対応規定等を定めた特別法Barrow Island Act 2003に基づいて実施されています。
 法令が整う州では下表のような代表的なCCSプロジェクトが進んでいますが、JOGMECはビクトリア州と連携し、CarbonNetプロジェクトに参画し商業化に向けて支援を進めているところです(参考2)。この他にもJOGMECは、日本企業の皆さまより豪州におけるCCS事業の検討についてご相談をいただいており、今後も積極的な技術支援を進めてまいります。

豪州での代表的なCCSプロジェクトについて

(出所:各種資料を基に公開情報からJOGMEC作成)

新たなインセンティブ制度の導入(CCSクレジットの創出)

 豪州では2021年10月に、CCSの普及を後押しする新たなインセンティブが導入されることがニュースになりました。豪州には2014年に導入された「排出削減基金」(ERF:Emission Reduction Fund)とよばれるオフセット・クレジット制度がありますが、そこにCCSが対象分野として新たに追加されたのです。これによって、CCSによって削減されたCO2量に応じて、クレジットを獲得できることになりました。
 ERFとは、連邦政府が8つの対象分野における排出削減プロジェクトを公募し、プロジェクトによるCO2削減量に基づきクレジットが発行される制度です。採択された事業者は、クレジットを政府に買い取ってもらうか、事業者間で売買することができます。この制度下で生まれるクレジットはACCUs(Australian Carbon Credit Units)と呼ばれ、植林や森林保全のプロジェクト、次いで廃棄物処理のプロジェクトがクレジット発行数の上位を占めています。
 ERFのCCS方法論によれば、CCSのクレジット期間(CO2の圧入期間)は25年間で、毎年CO2削減量に応じてクレジットを獲得できます。但し、クレジット期間終了後のCO2漏洩リスクを考慮し、削減量のうち3%が差し引かれた上でのクレジット発行となります(この3%分のACCUsは一定の条件下で将来事業者に戻されます)。また、CO2-EORと空気中からのCO2直接回収技術(DAC)は対象外とされています。
 国内の他の排出量関連制度との整合も考えられており、CO2削減量の算定に必要な係数などは、豪州の「国家温室効果ガス・エネルギー報告(NGER:National Greenhouse and Energy Reporting)スキーム」で用いる値と一致させることが求められています。また、国内の排出量規制である「セーフガードメカニズム」(年間10万トン以上を排出する施設が対象)との間では、削減量のダブルカウント防止が求められています。
 こうしたインセンティブ制度は豪州での事業検討を進める日本企業にも有益な仕組みです。JOGMECは海外での事業環境調査を進め、日本企業によるCCSや水素・燃料アンモニア事業の実現に向けて様々な支援業務を進めてまいります。


(参考1)「オーストラリアの国家水素戦略」(日本語版の掲載あり/2022年2月確認)

(参考2)JOGMECニュースリリース「世界初の国際的な褐炭水素バリューチェーン構築を日豪共同で推進」

カーボンニュートラル推進本部 石油・ ガス・CCSチーム 担当調査役
CCS推進グループ 総括・国際連携チーム 担当調査役
髙梨真澄
ファイナンス支援にかかる環境社会影響審査、
技術ソリューション事業、デジタル推進事業、
技術企画課等に従事し、2021年より現職。
米国デンバー大学法科大学院修士(国際環境/資源政策)。
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