CCS推進事業 国際連携 カーボンマーケットでの
取り組み

カーボンマーケットでの取り組み

CCSによるCO2削減量算定の
方法論開発への貢献

POINT
CCSプラス・イニシアティブへの参画を通じ、方法論開発の国際協力を推進
公的機関として国際的なルールメイキングに積極的に関与
カーボンマーケットの調査・分析の推進

CCSプラス・イニシアティブへの参画

西岡 JOGMECは2021年10月に「CCSプラス・イニシアティブ」に参画しました。CCSプラス・イニシアティブとは、CCSによるCO2削減量定量化のための包括的な基準・手順の開発を進める国際的な取り組みです。カーボンニュートラル社会の実現に不可欠とされるCCSですが、CCS事業から信頼性の高いカーボンクレジットを生成するための規則や要件、基準、手順の策定や運用は、特定の地域やプロジェクトタイプに限定されていました。CCSプラス・イニシアティブは、このギャップを埋めようとする取り組みで、石油メジャーズの他、カーボンコンサルタント、国際機関など、多くのキープレーヤーが参画しています。

水谷 CCSによるカーボンクレジットが大規模に導入されていない要因は、大きく2つ挙げられます。1つは、CCSの普及が再生可能エネルギーへの移行を遅らせ、気候変動緩和策の導入にブレーキをかけてしまうという懐疑的な見方。もう一つは、CCSの事業期間が長く、回収・輸送・貯留という性質の異なるフェーズを包含する複雑な事業であることから、CO2の測定・報告・検証を通じて緩和効果を包括的に示すことが技術的に簡単ではないという理由です。CCSプラス・イニシアティブは、石油ガス開発のトップランナーとクレジット開発企業がタッグを組み、この課題を克服しようという取り組みです。

西岡 SDGsの観点でいうと、CCSプラス・イニシアティブの活動は、目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」のほかにも、目標8「働きがいも経済成長も」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標12「つくる責任、つかう責任」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の達成に貢献する取り組みです。

水谷 CCSプラス・イニシアティブのような国際的なプラットフォームでの活動を通しても、JOGMECはSDGsの達成に貢献しています(参考)。また、CCSを通じて資源エネルギーに関連するCO2の排出量を削減していくことは、資源エネルギーの安定供給にも資する取り組みです。

公的機関として国際的なルールメイキングに積極的に関与

水谷 CCSでカーボンクレジットが生成されると、そのクレジットを売却することによりコストが一定程度回収できるため、事業の経済性が高まります。もちろん、CCSの経済性向上には、事業のスケールアップ、技術開発、制度的インセンティブの利用など、複数のアプローチがあり、カーボンクレジットもその一つの位置づけです。難しいのは、カーボンマーケットの動きが早く、ルールが日々変わること。たとえば、これまでカーボンマーケットでは再エネ・省エネ事業に由来するクレジットが発行されておりましたが、技術革新により多くの再エネ事業の経済性が上がっていることや、従来の枠を超えた新たな取り組みを促進するために、近年、主要なボランタリークレジット制度が再エネ・省エネ関連の新規クレジット生成を停止させたという動きもありました。

西岡 「ルールが確立されていない=見通しが不透明」ともいえますが、ここにJOGMECの貢献の余地があると思っています。私たちは日本企業を支援する公的機関ですので、誰かが決めたルールを享受するだけではなく、積極的にルールメイキングの場に出て行き、日本企業が裨益する方向にもっていくことが仕事だという意識です。これは、CCS事業環境整備の一環であり、公的機関として果たすべき重要な役割だと捉えています。

水谷 CCSは、地下評価、坑井掘削、CO2の分離・輸送・圧入のための施設設計や操業など、石油・天然ガスの開発・生産技術と共通点が多いので、JOGMECが長年にわたり石油開発で培った技術的知見がCCSでのクレジット生成のルールメイキングにも活用できるのですね。

西岡 そのとおりです。また、ルールメイキングの場にいることで、それぞれの制度での方法論開発について、最新動向の把握や専門家の見解を得ることが可能となります。このことは、JOGMECのガイドラインの充実化に役立っています。

カーボンマーケットの調査・分析

西岡 総括・国際連携チームでは、各地域のCCS関連制度に加え、カーボンマーケットの動向と関連制度の調査・分析を急ピッチで進めています。調査に基づき、コンプライアンス市場、ボランタリー市場の双方で、JOGMECがどのような役割を果たしていくか、不断の検討を行っています。

(参考)JOGMECの持続可能な開発目標(SDGs)への取組方針

カーボンニュートラル推進本部 総括・企画チームサブリーダー
CCS推進グループ 総括・国際連携チームサブリーダー
西岡さくら
2013年入構。資源外交、経営企画等の業務を経て、2021年より現職。
CCSプロジェクトの政策・制度的課題の検討を担当。博士(社会科学)。
カーボンニュートラル推進本部 総括・企画チーム
CCS推進グループ 総括・国際連携チーム
水谷健亮
2012年入構。戦略企画、国際石油交渉、海外法律事務所出向を経て、2021年より現職。
海外CCS制度調査等を担当。法務博士(カナダ・アルバータ州弁護士およびブリティッシュ・コロンビア州弁護士)。

※所属・役職及び本記事の内容は執筆時点のものです。

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