CCS推進事業 国際連携 CCSの社会実装に向けて

CCSの社会実装に向けて

CO2排出量やCCS事業の認定

POINT
カーボンニュートラルとCCS(二酸化炭素地下貯留)
世界で高まるCO2削減価値
CO2排出量やCCS事業に関する認定スキーム

カーボンニュートラルとCCS(二酸化炭素地下貯留)

 二酸化炭素地下貯留(CCS)とは、化石燃料等を生産する際に排出される二酸化炭素(CO2)を分離して、地下深くに圧入し閉じ込める技術です。パリ協定の目標実現や、世界でのCO2排出量実質ゼロを目指して、日本政府も欧州各国に続き、2050年カーボンニュートラル宣言をしています。実質ゼロ、つまりカーボンニュートラルとは、排出されるCO2と吸収されるCO2の量を同じにするという意味ですが、どのように実現していくのでしょうか。それには、私達の暮らしを支える電力、航空機・自動車等の輸送燃料、鉄・コンクリート等の建築資材、プラスチックや繊維製品といった、日常的に使用する物質の製造過程で生じるCO2を、私達がおおかた想像しうるあらゆる手段で削減し、ゼロにしていく必要があるということです。その手段の一つとして、CCSは重要な役割を担うと考えます。また、CCSは世界の貧困問題や自然災害と密接に紐づく気候変動を緩和する、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献する取り組みです。
 しかし問題点は、このCCSというプロジェクトは産業界にとって追加コストになるということです。CO2を大量に効率的に地下に圧入し長期貯留するには、最適なシステムでCO2を分離・回収・輸送し、地下構造の技術的評価、設備建設を含めた長期にわたる事業運営、将来安定してCO2が貯留できることを評価するモニタリング、といった石油ガス開発プロジェクトに匹敵する事業になることが想定されます。気候変動問題に対応していくには、世界の各国と連携し、技術・コスト・制度などの面での解決の道筋を探り、CCS事業を推進していく必要があるのです。

世界で高まるCO2削減価値

髙梨 気候変動政策や法規制の整備が進む欧州や北米では、カーボンプライシング(炭素価格付け)といって、温室効果ガスの排出に対して課される炭素税や、政府が燃料や製品ごとにCO2の排出基準値を定めて、排出超過により不足する分もしくは削減努力により余った分の排出枠を事業者が市場取引できる排出量取引制度等を導入している国々があります。現在CCSプロジェクトの多くはなんらかの政府支援により成立していますが、炭素価格が設定されている地域では、CCS事業に市場価値が生じ始めています。各国政府はこうした制度設計により、CCS事業がビジネスモデルとして成立するよう後押ししている状況であり、カーボンニュートラル目標の2050年が近づくにつれて、世界各地で炭素価格は過去になく高まっていくといわれています。また、例えばLNGや水素・アンモニア製造等の事業者は、自主事業のCO2削減や脱炭素化を積極的に進めることで、ESG投資等の地球温暖化に危機感をもつ投資家資金を安定して確保できる可能性も高まるでしょう。さらには、CCSに加えて植林等のカーボンクレジットも活用した「カーボンニュートラルLNG」(資源の採取から、輸送、最終消費までのライフサイクルで発生するCO2をオフセットしたLNG)が、カーゴ毎にプレミア取引される事例をみると、今後LNGや次世代を担う水素・アンモニアの製造においても、CO2排出量を削減していくことが事業や製品の市場価値に繋がっていくと考えられます。

CO2排出量やCCS事業に関する認定スキーム

下内 LNGや水素・アンモニアのような低炭素またはCO2フリーの資源において、開発・製造時から日本に輸送されるまでの間にどのくらいのCO2やGHGを排出しているかを可視化することは今後とても重要になります。炭化水素から作られる資源(ブルー)と再エネ由来で作られる資源(グリーン)を単に分類するのではなく、Carbon Intensity(二酸化炭素排出量原単位)という指標でCO2排出量を定量的に評価することが求められていくでしょう。その際、事業者独自の算定方法ではなく、国際的に調和の取れた手法かつルールに準拠し、客観的に信頼できる算定方式であることが必要になってくると考えます。また排出されたCO2を、CCSによって地下に圧入した場合の貯留量や、長期間にわたりCO2が安定的に貯留可能であることを評価することは、大きな意義を持ちます。これらにおいて公的機関であるJOGMECは一定の役割を担うことができ、JOGMECがこれまで石油天然ガス開発で築いてきた地下評価技術や、実証研究で蓄積した地上施設技術のノウハウを活かして評価体制を築いていくことは、海外で資源エネルギー事業に取り組む企業の支援になると考えています。エネルギーセキュリティを担うJOGMECとしては、CO2排出算定やCCS事業評価の支援をしていくことで、日本の持続可能でクリーンなエネルギーの安定供給確保に貢献することができればと考えます。

カーボンニュートラル推進本部 石油・ ガス・CCSチームサブリーダー
CCS推進グループ 総括・国際連携チーム サブリーダー
髙梨真澄
ファイナンス支援にかかる環境社会影響審査、
技術ソリューション事業、デジタル推進事業、
技術企画課等に従事し、2021年より現職。
米国デンバー大学法科大学院修士(国際環境/資源政策)。
カーボンニュートラル推進本部 石油・ ガス・CCSチームサブリーダー
CCS推進グループ 総括・国際連携チーム サブリーダー
下内真
エンジニアリング会社において、
中東でのガスプラント事業や液化天然ガス製造事業に従事。
2019年よりJOGMECにて施設技術事業に従事し、2021年より現職。

※所属・役職及び本記事の内容は執筆時点のものです。

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