デジタル推進事業 技術的課題解決ヘ向けたPoC 石灰質ナンノ化石の自動同定に
基づく年代測定(地質分野)

石灰質ナンノ化石の自動同定に基づく
年代測定(地質分野)

産官学による化石の自動鑑定プロジェクト

POINT
井戸の掘削現場における地質的課題
産官学連携で、システム構築に必要なデータ数を用意し、AIを作成
AIの石油・天然ガスの掘削現場への適用にむけて

石灰質ナンノ化石が石油・天然ガス開発に与えるインパクト

 石油・天然ガス開発の井戸の掘削には数か月がかかり、お金の面では数億円から高いもので100億円以上かかるものもあります。中でも、石油・天然ガス開発の掘削リグの1日あたりの賃貸料は高いもので数千万円以上します。したがって、掘削日数を1日短縮することができれば、コストダウンのインパクトも非常に大きいものとなります。
 地上や海上にある掘削リグから地下もしくは海底下の状況を詳細に把握することは難しく、安全に無駄なく掘削するためには、今どの時代の岩石を掘削しているかということは非常に重要な問題です。その際、地下の岩石が堆積した年代を決めるためには化石を用いることが多いです。化石と言えば恐竜やアンモナイトのような大きな化石を想像されると思いますが、岩石の堆積年代の決定に用いる化石は、微化石と呼ばれる大きさ数ミリメートル以下の非常に小さなもので、掘削作業中に掘り出されるカッティングスという岩石片の中に微化石は多く含まれ、これまでは専門家による鑑定が不可欠でした。しかしながら、微化石の種類を鑑定できる専門家は日本にほとんどおらず、したがって、微化石の専門家が掘削リグに常駐することは難しく、リアルタイムにどの時代の岩石を掘削しているかということを知ることはこれまで困難でした。
 そこで、JOGMECでは、微化石の中でも石灰質ナンノ化石に注目して、数少ない石灰質ナンノ化石の専門家の知見をAIに学習させ、リアルタイムで岩石の堆積時代を把握するプロジェクトに取り組んでいます。

左図:石灰質ナンノ化石の顕微鏡写真
右図:石灰質ナンノ化石を含む試料の顕微鏡写真(赤枠に見える物体が石灰質ナンノ化石)

産・官・学

 優れたAIを開発するためには、AI技術と相性の良い課題とデータ、課題に対する深い専門性、質の高いデータ解析技術が必要不可欠です。しかしながら、これらすべてを持ち合わせている石油・天然ガス開発会社は日本に存在しません。汎用性が高く現場で使用できるAIを開発するためには、様々な強みを持つ会社や組織が協力する必要性があります。石灰質ナンノ化石を鑑定するAIプロジェクトでは、産官学連携が大きな特徴となっています。石油・天然ガス開発における現場の知見は株式会社INPEX(旧:国際石油開発帝石株式会社)、AI開発は富士通株式会社、官の立場からのプロジェクト支援はJOGMEC、石灰質ナンノ化石を同定する専門的な知見は秋田大学が担い、それぞれが持つ強みや知見を最大限活かしながらプロジェクトを進めています。

AIの石油・天然ガスの掘削現場への適用にむけて

 石灰質ナンノ化石のAIプロジェクトで用いているAI技術は、SSD(Single Shot MultiBox Detector)をベースとした物体検出およびクラス分類を行うアルゴリズムになります。これまで数千枚におよぶ石灰質ナンノ化石の写真を収集しAIに学習させてきました。AIが石灰質ナンノ化石の種を鑑定することが既に可能になっており、まだ特定の地質時代だけになりますが岩石の堆積年代を推論できるところまできており、実際の石油・天然ガス開発の現場で使えるまであと一歩というところです。2020年度後半時点では世界各地の石油・天然ガス開発現場から採取されたカッティングス試料を用いて、本プロジェクトで作成されたAIが実際の掘削現場で活用できるかどうか検証作業を進めています。
 本プロジェクトは、資源開発2.0における技術実証~日本企業のプロジェクト上の課題解決(技術実装)フェーズに該当しており、上流開発企業(株式会社INPEX)、大学/研究機関(秋田大学)、DX/AI企業(富士通株式会社)と共に、日本企業の競争力を強化し得る技術分野の確立を目指して、今後も石灰質ナンノ化石のAIを石油・天然ガス開発の現場に適用できるように研究開発を進めていきます。

技術部探査技術課(併)デジタル技術チーム
南條貴志
2012年入構。
統括部技術企画課、探査部海外探査課を経て
2016年より技術部探査技術課に所属。
2018年よりデジタル推進グループデジタル技術チーム併任。
デジタル推進事業 技術・活動紹介の一覧へ戻る