デジタル推進事業 技術的課題解決ヘ向けたPoC 炭酸塩岩の岩相解析(地質分野)

炭酸塩岩の岩相解析(地質分野)

石油開発は
アナログからデジタルの時代へ

POINT
石油開発における専門技術の過去と未来
AI技術と石油開発の専門技術の融合
石油開発におけるAI技術の将来とJOGMECの展望

石油開発における専門技術の過去と未来

 石油・天然ガスは地下数千メートルの岩石中に胚胎しています。しかしながら、地下の状態を「目」で確かめることはできません。このため、石油開発における技術者は、地下の状態をあらゆる手法を用いて明らかにしようと日々戦っています。
 1990年代石油開発における地下の解釈作業は地質技術者や物理探査技術者が紙と鉛筆を持って行っていました。2000年代に入ると紙と鉛筆がパソコンに変化し、2021年現在、地下の解釈作業を紙と鉛筆で行う文化は廃れてきています。しかしながら、地下の解釈作業は地質技術者や物理探査技術者が1990年代と変わらず現在も専門性や経験を頼りに行っています。
 そんな中、2010年代初頭から石油開発とは遠い世界で、ディープラーニングを用いたAI技術が急速に発展し次世代を担う新技術として注目を浴びています。このAIの技術はコンピュータが「目」を持ったと言われるほど画像を解釈・解析することに強みを持っています。実は石油開発における地下の解釈作業において、化石の同定やボーリングコアの観察など「目」の技術を用いることは思いのほか多いのです。
 AIに石油開発の技術者の「目」を学習させることができれば、地下の解釈作業の部分で革命が起こるのではないかと考えています。

炭酸塩岩とディープラーニング

 炭酸塩岩というのは聞き慣れない言葉かもしれません。しかしながら、日本が石油の多くを中東から輸入している事実を知っている方は多いと思います。この中東の地下に石油を胚胎している岩石の多くが炭酸塩岩なのです。したがって、炭酸塩岩を理解するということは、本邦石油開発会社が多く活動する中東における石油資源を獲得する上でキーポイントとなってきます。
 炭酸塩岩を理解するために必要な専門性を持つ技術者は日本にそれほど多くいません。また、専門家を育成するためには少なくとも数年の時間がかかり、今から多くの技術者を育成することは現実的ではありません。AIの強みは一度専門家の「目」を学習させてしまえば、専門家の「目」を誰でも使えるところにあります。そこでJOGMECが持つ炭酸塩岩の専門家としての「目」をディープラーニングを用いてAIに学習させ、AI技術と石油開発技術を融合するプロジェクトを立ち上げました。

石油開発におけるAI技術の将来の展望

 我々JOGMECが行う技術開発PoCの多くはITベンダーと共同で実施することが多いですが、本プロジェクトは、AI技術の蓄積を目的としてJOGMEC独自で実施しています。本プロジェクトで使用しているAI技術は、セマンティックセグメンテーション(画像のピクセル1つ1つに対して、何が写っているか物体を判定するもの)という画像のピクセルごとにラベルを分類するディープラーニングの一種で、本技術は自動車の自動運転や癌の自動診断でも利用されています。
 現在のところ、専門家の「目」をAIに学習させられており、順調にプロジェクトが進んでいます。画像を確認してみても、専門家が解釈した画像とAIが推論した画像でほとんど違いがないことがわかります。しかしながら、世界中の炭酸塩岩にJOGMECで作成したAIが適用できるまでには至っていません。現在は、作成したAIに汎用性を持たせるという課題を解決するために日々検討を重ねています。
 本プロジェクトを通してJOGMEC独自のAI技術が蓄積されてきており、また、AI技術と親和性の良い石油開発の技術分野でも応用できることがわかってきています。石油開発の地下の解釈作業の部分で革命を起こせるようJOGMECでは今後もAI技術を蓄積し、日本の石油開発業界のデジタルナレッジセンターとして日々研究開発に取り組んでいきたいと思っています。

A:炭酸塩岩の顕微鏡写真  
B:専門家が解釈した解釈画像 
C:AIが推論した画像 
(Nanjo and Tanaka, 2019より引用)

技術部探査技術課(併)デジタル技術チーム
南條貴志
2012年入構。
統括部技術企画課、探査部海外探査課を経て
2016年より技術部探査技術課に所属。
2018年よりデジタル推進グループデジタル技術チーム併任。
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